多磨全生園内「土塁・堀の考古学調査」についての成果報告会

多磨全生園内「土塁・堀の考古学調査」についての成果報告会

多磨全生園内「土塁・堀の考古学調査」についての成果報告会を下記日程にて開催しました。
日 時 2017年3月26日(日)14時~15時30分
場 所 国立ハンセン病資料館 1階映像ホール

多磨全生園内「土塁・堀の考古学調査」についての成果報告会を開催しました
 3月26日(日)午後2時から、多磨全生園内「土塁・堀の考古学調査」についての成果報告会を開催しました。当館では、多磨全生園と入所者自治会の協力を得て、昨年度に引き続き、全生病院草創期に「患者地区」を囲った土塁・堀に関する多磨全生園内での考古学調査を行っています。1月7日に開催しました多磨全生園内「全生学園跡地」における「堀」の現地見学会に続き、当日も大勢のお客様にご参加いただきまして、ありがとうございました。


多磨全生園内「全生学園跡地」における「堀」の現地見学会を行いました

 当館では、全生学園跡地において、全生病院(現多磨全生園)を囲んでいた土塁・堀に関する調査を2016年11月中旬から進めております。
 これに合わせ、下記日程にて、多磨全生園内「全生学園跡地」における「堀」の現地見学会を行いました。
日 時 2017年1月7日(土)11時~15時
場 所 多磨全生園内「全生学園跡地」における発掘調査現場
 多磨全生園の草創期(全生病院時代の20世紀前半)に「患者地区」を総延長1.1キロメートルにわたって囲った「堀」の一部と出土品(ガラス瓶、磁器碗など)をご覧いただきました。



「全生学園跡地」における「堀」の発掘調査-現地見学会資料-(国立ハンセン病資料館 2017年1月7日(土)開催)


調査の概要
 今回の発掘は、全生(ぜんせい)学園跡地において、草創期の全生病院(現多磨全生園)の「患者地区」を囲んでいた堀の実在を確認する調査でした。堀の残存状況を詳細に計測し、図面と写真、出土遺物を整理調査し、略図と風景写真しかない堀の時期・構造等を明らかにすることを目的としました。調査面積は約200㎡で、調査期間は、平成28年11月15日から平成29年1月20日までです。調査終了後は、養生し埋め戻し・復旧を行い、現状保存をしています。




調査の成果
 草創期の全生病院では、「患者地区」を囲む「土塁と堀」がありました。外部との行来を阻む「隔離」を象徴する施設でした。大正後期に入所者増に伴う敷地拡張により埋め立てられて、忘れ去られたものとなりました。今回の発掘調査において、土塁の痕跡は確認できませんでしたが、堀はほぼ当時の状況のまま遺存していました。地山である関東ローム層を掘り込み、堀の上部幅は約4m、表層からの深さ約2m、下部幅約1.8mで、土塁頂部との高低差は4m近くであったと想定されます。傾斜角度は45度程あり、面は丁寧に整正され、足がかりもなく、容易に越えられない構造であったことが改めて確認されました。
 右上の写真は1925年(大正14)頃の調査地点の様子です。すでに堀は埋められていますが、土塁は残っています。右下の写真は1920年代後半の写真です。南東コーナーの土塁が崩されています。一方で残存した土塁の上で入所者がテニス観戦している様子がうかがえます。


図版は[「全生病院」を歩く-写された20世紀前半の療養所-]
国立ハンセン病資料館 2010から引用・加筆


 今回の発掘調査は、堀の検出を目的としていましたが、その過程で全生学園の基礎跡も検出されました(写真1)。全生学園は、1931年に建てられ2008年頃に解体されましたが、詳細な位置や記録がありませんでした。今回の調査により位置および基礎の構造が記録できました。記録後、堀の部分は除去し、範囲外は現地に温存としました。

 堀の埋め土は、遺物出土を目的として、すべて人力で掘削しました。堀の堀方は固い地山であり埋め土は明瞭であったため、比較的容易に掘りあげることができましたが、当時の掘削は、硬い地山のローム土を人力で掘りあげることであり、それがいかに大変な作業であったかと想像されます。

 底部付近は、ほぼ垂直に掘られ、底面には堀に並行する段差が確認されました。築造以降幾度となく堀浚いをする過程で堀り加えられた痕跡である可能性が考えられます。

 土層断面(写真2)の観察では、堀の埋土は南側から北側へ傾斜をもって流入していることがわかりました。このことから、堀は南側から客土により埋められた可能性が高いといえます。前述の当時の写真においても土塁は残存し、堀が埋められてる状況と一致します。

 堀の底部付近からは、ガラスビンや陶磁器が出土しました(写真3・4)。堀の掘削は1909年、埋戻しが1925年頃、全生学園の竣工が1931年なので、堀の覆土からの出土品は、おおむね20世紀第1四半期に流通していたものだと推定されます。詳細についてはこれから調査を進めます。

 今後の調査予定は、昨年度調査に継続して職員地区に残存する土塁際の堀検出を目的とした試堀を予定しています。職員地区の竹藪内には、「堀・土塁」も痕跡が現存しています。

-お知らせ-
 国立ハンセン病資料館では、3月26日(日)14時半から多磨全生園内の土塁・堀の考古学調査について成果報告会を開催いたします。場所は、国立ハンセン病資料館 1階映像ホールです。こちらについてもご参加ください。(参加費無料)



参考資料




図版は[「全生病院」を歩く-写された20世紀前半の療養所-]
国立ハンセン病資料館 2010から引用・加筆


多磨全生園内「全生学園跡地」における「堀」の現地見学会の様子(国立ハンセン病資料館 2017年1月7日(土)開催)